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低α線シリカはなぜメモリ・高信頼性半導体パッケージに用いられるのか?

低α線シリカは、U・Thなどの放射性不純物とα線放出率を管理することで、封止材がメモリ等のデバイスのソフトエラーに与える寄与を低減します。本稿では、ソフトエラーの発生メカニズム、低α管理と低U管理の違い、材料の評価方法、サプライヤーと調達側の仕様すり合わせという観点から、半導体封止における低α線シリカの役割を解説します。

技術解説PMAT 編集部

シリカは、エポキシモールディングコンパウンド(EMC)をはじめとする半導体封止材で広く用いられる主要な無機フィラーです。原料には、極微量のウラン(U)、トリウム(Th)やその崩壊生成物などの自然放射性不純物が含まれる場合があり、そこから放出されるα粒子が一部の半導体デバイスの信頼性に影響を及ぼすことがあります。α粒子がチップ内の感受性の高い領域に到達すると、記憶データの一時的な反転、すなわちソフトエラーを引き起こす可能性があります[1][2]。このため、シリカのα線放出レベルを低く管理することは、無機フィラーとしての基本機能を維持しながら、封止材そのものに由来するα粒子の寄与を抑えるうえで重要です。

α粒子に起因するソフトエラーは、一般に単一の放射線イベントによって発生し、デバイス構造が恒久的に損傷するのではなく、回路上のデータ状態が一時的に変化する現象です。α粒子がシリコン中に入射すると、多数の電子・正孔対が生成されます。これらの電荷が記憶ノードや接合部に収集され、その量がノードの臨界電荷を超えると、保持されていた「0」または「1」が反転することがあります。MayとWoodsは1979年のDRAM(Dynamic Random Access Memory)に関する研究で、封止材中のU、Thの崩壊に伴うα粒子が単一ビットソフトエラーの重要な要因となり得ることを示しました[1]。そのため、DRAMやSRAMなどソフトエラー感度の高いメモリに加え、データ完全性や高い信頼性が求められるデバイスでは、封止材料の段階からα粒子源を管理することが重要です。

半導体封止材では、シリカは通常、樹脂系に高充填される主要な無機フィラーであり、封止後はチップ近傍に位置します。先端パッケージ材料に関する文献では、EMC中のSiO₂にUやThなどの放射性不純物が含まれる場合、DRAMなどのメモリ信頼性を確保するため、そのα粒子寄与を低減する必要があるとされています[2]。また、日本化学工業が2003年に公表した技術資料では、メモリ用樹脂封止材向けに低α線シリカが使用され、当時の製品仕様例としてU含有量0.1 ppb以下が示されています[3]。この値をすべての製品に一律に適用すべきではありませんが、低α管理が早い段階から日本の半導体封止材料の実用仕様に組み込まれていたことを示す一例です。

低α管理と低U管理は密接に関係していますが、管理対象は同一ではありません。Uはα粒子源の一つであり、Thおよびその崩壊系列も管理対象となります。このため、U・Th含有量は放射性不純物を管理する指標として有用である一方、α線放出率は、規定の測定条件下で材料から実際に放出されるα粒子のレベルをより直接的に示します。製品設計では、溶融シリカ、球状化、粒度分布といった既存の粉体設計に低α要求を追加して考えることができます。サプライヤーには、純度、粒度、イオン性不純物、金属不純物などの一般特性を安定させるだけでなく、顧客仕様に応じてα線放出率、必要に応じてU・Th分析値を提示できる管理体制が求められます。

評価方法では、材料のα線放出率測定と、デバイスのソフトエラー評価を区別する必要があります。JEDEC JESD221「Alpha Radiation Measurement in Electronic Materials」は2011年に発行され、半導体製造材料のα線放出率を測定するための推奨方法を示しており、測定装置の設定、試料寸法、バックグラウンド、検出限界の算出、結果報告などについて規定しています[4]。一方、JEITAが2005年6月に制定したEDR-4705「ソフトエラー試験ガイドライン」は、主にSRAMやDRAMなどの半導体メモリを対象とし、宇宙線および半導体デバイス材料中の放射線に起因するソフトエラーの予測・試験方法を扱っています[5]。前者は材料のα線放出率、後者はデバイスのソフトエラーを評価するもので、評価レベルが異なります。

したがって、材料仕様をすり合わせる際には、サプライヤー側の材料評価条件と、調達側のデバイス信頼性要求を対応付けて確認することが重要です。サプライヤーは、α線放出率の測定方法、単位、検出限界、サンプリング条件、ロット管理方法を明確にし、顧客要求に応じてU・Thなどの補助分析データを提示する必要があります。調達側は、デバイスの感度、パッケージ構造、信頼性目標に基づいて受入基準と確認頻度を設定します。JESD221は測定方法を示す規格であり、低α線シリカに対する統一的な合否基準を定めたものではありません。そのため、同じ「低α」と表示された材料であっても、測定条件と顧客仕様が一致しているかを確認する必要があります。最終的な材料認定では、低α特性だけでなく、粒度分布、粒子形状、樹脂系との適合性も含めて評価することが重要です。

低α線シリカがメモリや高信頼性半導体パッケージに用いられる主な理由は、封止材から放出されるα粒子に起因するソフトエラーのリスクを低減できる点にあります。サプライヤー側では、U・Thなどの放射性不純物とα線放出率を安定して管理し、検証可能かつトレーサブルな製品データとして提示できることが重要です。一方、調達側では、デバイス感度、パッケージ構造、信頼性目標に応じて、適切な測定方法と受入基準を設定する必要があります。さらに、低α特性は単独で評価するのではなく、シリカの粒子形状、粒度分布、樹脂との適合性など他の仕様と合わせて判断する必要があります。これらの条件が対象デバイスと封止プロセスの要求を同時に満たしてはじめて、安定した量産採用につながります。

出典

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